先日開催されたスカイスポーツシンポジウムに、本プロジェクトから2件の発表を行いました。
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1. 背景と問題点 現在使用しているmuRata 18650VTC6 Li-ionバッテリーの電圧と容量は、図1の「0.4A放電曲線」に示すような曲線関係がある。この曲線は、バッテリーを0.4[A]放電させ任意の時間にテスターで電圧を計測し、放電電流と放電時間から容量[mAh]を求め作成した。この曲線を用いて、実測電圧から容量を推算することができる。 しかし、実測電圧・推算容量とpixhawkのログデータに差があり、容量を正しくQGCに表示させることができないことが課題となっていた。この問題を解決すべく、PX4ソースコードを確認し、それを基に再度キャリブレーションを実施(後述 直線①)最後に0.4[A]放電試験を実施し、ログデータと後述する直線①と重ねることで、試験結果を評価した。 2. QGC・Pixhawkでの処理 2.1. QGCの設定 セル数、最大電圧、最小電圧を任意に設定できる。 2.2. Pixhawk https://px4.github.io/Firmware-Doxygen/d2/dde/lib_2battery_2battery_8cpp_source.html https://px4.github.io/Firmware-Doxygen/d7/d0a/_functions_8hpp_source.html PX4では、QGCで設定した最大・最小電圧の2点を直線で結び、その領域で電圧・残量を推算している 電圧残量 = math::gradual(cell_voltage, _最小電圧, 最大電圧, 0.f , 1.f) 3. QGC上で設定する最大・最小電圧の算出 2.2項で述べたように、PX4では最大・最小電圧を結ぶ直線を基に容量を推算している。この直線と実際の放電曲線の傾きが近くなれば、実測値とログデータの差が小さくなると仮定し、放電曲線50[mAh]〜2500[mAh]付近の傾きに合わせ、直線の式を以下のように設定した。 式①にx=0、x=3070を代入し最大電圧と最小電圧を求めた。また、実際に電圧と容量を測定して得たバッテリー放電曲線と、式①のグラフ(以後、直線①)を図1に示す。 機体はバッテリー残量20%を切った段階で、着陸を開始させる。そのため、放電曲線の残り20%位置までの傾きを基準とした。
4. 放電試験 上で求めた最大・最小電圧をQGC上で設定し、図2の負荷装置を用いて0.4[A]放電を行い、容量測定を行った。 試験結果と直線①を図3に示す。 ログデータをプロットしたが、直線①上に乗らなかった。調査の結果、以下の2点が原因であることが分かった。
よって、1については“discharge mah”をプロットし直し、2については最大・最小電圧が反映されていない状態の値を用いて、直線②を作成した(図5)。その結果、試験結果は直線②と重なった。 その後、直線①の設定で再度同様の試験を実施した。 QGC上のparameters欄にて電圧を再設定し、試験を実施した。図5に示すように、直線①とログデータが重なったため、PX4では任意に設定した最大・最小電圧を直線で結び、その領域内で残容量推算をしていることが確認できた。
以上の結果から、PX4が推算・QGC上に表示する残容量を、実際の値に近づけることができた。よって、飛行試験中において、リアルタイムに正確な電圧と残容量をQGC上でモニタリングすることが可能となった。 1. 試験目的 8/28の24時間飛行試験時に、飛行中ソーラーパネルからの電力供給があるにも関わらずバッテリーへ充電がされない現象が確認された。原因をMPPTの不調と仮定し、福島の試験場にて飛行状態を地上で模擬しMPPTの動作確認試験を実施したが電力の供給と出力が一致せず、問題解決には至らなかった。 問題箇所を洗い出すことを目的とし、MPPTとソーラーパネルの動作確認試験を実施した。 2. 試験概要 飛行状態を室内で模擬すべく、ソーラーパネルを安定化電源に、モーターを負荷装置に代替し試験を実施した。また、いずれの条件もバッテリは4並列で実施した。 条件1:安定化電源からの共有電力一定(output変化) ・3変数の関係式はW_sup=W_load+W_battとした。符号はいずれも増加方向が正である。 ・安定化電源からの供給電力を48Wに保ち、バッテリの消費電流・電圧を測定し消費電力を算出した。 条件2:負荷装置からの出力一定(input変化) ・3変数の関係式はW_load=W_sup+W_battとし、符号はbattが増加(充電)方向に負、loadとsupは増加方向に正である。 ・負荷装置からの出力を一定に保ち、安定化電源からの供給電力を増加させた。 3. 試験時発生問題 3.1はんだ取れによる接触不良 コネクタ接合部などで、はんだ取れによる接触不良が数カ所確認された。そのため、全てのはんだ付け箇所を見直し、接触不良を起こした箇所についてはXT60の取り付け直しを実施した。また接合箇所を削減させるためMPPTとソーラーパネルの接続箇所を2段階接続からMPPTに直接XT60を取り付けることで1段階接続へ変更した。 5. 試験結果 ・符号はいずれも、増加・充電方向を正とした。(矢印方向が正) 5.1 条件1試験結果 ・条件1での3変数の関係式はW_load=W_sup-W_battとした。 ・負荷装置からの出力を一定に保ち、安定化電源からの供給電力を増加させた。安定化電源からの供給が負荷装置からの出力を上回る時、バッテリへの充電が開始される。 ・①から③で、負荷装置の出力が安定化電源からの供給電力を上回っている間は放電状態、④で安定化電源からの供給電力が負荷装置の出力を上回ったためバッテリーは充電を開始した。 ・MPPTを介し安定化電源から電力供給を行う際、ロスが発生しているが設定した許容範囲内であるためエネルギー収支は釣り合っているとした。 条件2試験結果 ・条件1での3変数の関係式はW_sup=W_load+W_battとした。(いずれも符号は増加方向に正) ・安定化電源からの電力供給が一定で、負荷装置からの出力を増加させたため、徐々にバッテリ残量は減少する。 ・一貫して約6Wのロスがあるが、概ね期待通りの結果である。 6. 追加試験 上記の試験結果から、MPPTの動作に問題がないと判断した。次の段階として、パネル側に問題がないかを確認するため、安定化電源をソーラーパネルに変更した試験を計画した。 6.1試験概要 電力供給の流れは上の図とし、符号はいずれも増加・充電方向を正とし、パネルからの供給電力が一定の場合(前試験の条件2)を再現した(W_sup=W_batt+W_load) 計測は右翼のみ・左翼のみ・両翼の3条件で実施し、目標出力電力は10wから70wまで7段階に設定しバッテリーの放電状況を確認した。 また基準の電圧を決定するため出力0の場合のバッテリーの電圧を計測した。目標出力電力と基準の電圧を基に、負荷装置での入力電流を決定した。 またロスについては想定バッテリー入力電力とバッテリー入力電力の実測値の差分として算出した。(W_loss=W_est-W=load) 7. 追加試験試験結果 7.1右翼のみ 日射量は約90w/㎡であった。いずれの段階も、推定発電電力の90%以上の発電量があるため、パネル側に問題はないと考える。 7.2 左翼のみ 日射量は約90w/㎡であった。 推定発電電力に対し、実際の発電量は約60%程であった。左翼については8月の時点で破損等が確認されており、1箇所バイパスを行っている。 7.3両外翼 日射量は約90w/㎡であった。両外翼の合計発電量は約10wであり推定発電電力値に対し、約60〜70%の発電量であった。(パネル発電量の悪い方に引っ張られている)
①から⑦いずれの場合も、想定バッテリー入力電力よりもバッテリー消費電力の方が小さい値 であるため、パネルからの供給電力があることが確認される。 (パネルの発電量9wに対し、ロス6wであるため残りの2〜3wが負荷装置への供給に回っている) 8. 考察 日射量100w/㎡の環境下で両外翼の発電量が約10wであった。同じ環境下において、中央翼の発電量を5wとすると、主翼全体の発電量は15wと仮定できる。 以上の結果と仮定から日射量が1000w/㎡以上確保できた場合、主翼全体の発電量は150wと推 算できる。150wの発電が確保できるのであれば、日中の飛行は可能であると考えられる(日射 量が晴天時の1/10の環境で、発電量も目標値の1/10であったため、問題のあるパネルがありそ うだが、長時間飛行はできるであろう) 11月27日(土)に開催されたスカイスポーツシンポジウムに、本研究所から4件投稿しました。 本記事の最下部に、講演に使用した発表資料を公開します。 スカイスポーツシンポジウムは模型飛行機、グライダー、人力飛行機などについて技術的な内容をはじめとし、解説、紹介といったよりカジュアルな内容の講演もある、航空の「草の根」的な講演会です。特に、鳥人間の発表が毎年目立って発表がなされている印象ですが、昨今のパンデミックにより大学の部活動が制限されている関係からか、今年の発表件数は比較的少数でした。 講演題目については、プログラムを参照ください。 今年はオンラインでの開催となりましたが・・・やはり気軽に質問したり、ざっくばらんな話を交わすのはなかなか難しいですね。現地であれば、適当に講演後に質問したり交流したりできるのですが。 ともあれ、今回の講演会の参加にあたり、事務局の日本航空宇宙学会の方々にはお世話になりました。この場で御礼申し上げます。 世相が落ち着き、ソーラー機についてもよりレベルアップした状態で、またどこかでお話しできる機会が訪れることを期待して。 下記、講演資料を添付します。 ※1ファイルあたり1~3 MB程度です。 2021年8月28日(土)、第1回24時間飛行と銘打ち、初の長時間フライトへ挑みました。 最高気温は30℃超え、天気はやや曇りがちではあるが晴れ。微風。 近頃雨が続く中、絶好のコンディションとなりました。 当日のコンディションで、なるべく最長時間飛行を目指し、風・天候・バッテリー残量を見ながら着陸させるか判断する、と事前に打ち合わせ、機体を飛ばしました。 無事離陸し、高度80mを旋回半径120~200mで維持旋回しながら滞空する飛行ミッションを実施。 結果としては、今回は3時間58分のフライトとなりました。平均して約135Wの消費電力でした。日中、雲がかかるタイミングはあったものの日射量としては最大1000 W/m^2を超える程度でしたので、太陽光発電をするには十分でした。しかし、システムの不具合により、太陽光発電ができていなかった可能性が考えられるため、現在原因を調査しています。 数時間単位での機体、システムの耐久性を確認できたことは収穫ではありました。一方で、バッテリーのみの飛行ではそもそも“ソーラー”飛行機ではありません。今後、システムの確認を行い、再挑戦したいと思っております。 本プロジェクトは、一部クラウドファンディングによる資金援助をいただき、実施いたしました。
https://camp-fire.jp/projects/view/339670 下記の皆様より格別のご支援を賜りました。メンバー一同、心より感謝申し上げます。 また、当日、一部支援者の方々限定にて配信しておりましたストリーミング再生が、たびたび通信トラブルにより途切れておりましたこと、この場を借りてお詫び申し上げます。 < 支援者一覧 > クフウシャ 大西 様 近藤勝俊 様 SkyProject2015代表 様 石井裕太 様 pon1026 様 GUO LUREN 様 佐藤允 様 飯田大貴 様 冨上泰寛 様 株式会社おおきに 野寄聖統 様 狩野家 様 ブログ更新が滞っていましたが…
前回投稿しましたS-1が墜落しました…その墜落から約1ヵ月… 修理が完了し新型機S-2が初飛行をしました! S-1とほぼ同形態ですが、主翼前縁厚さを0.5→1.0mmへ変更や、水平尾翼構造変更、エルロン舵面の軽量化、中央翼バッテリーマウント部補強など細かい変更をしました。 今回のフライトでは、機体アライメント確認や操縦性確認、揚抗比測定を実施しました。 滑空時に左に向く癖があること、ロールに対する追従性が遅いなどの問題がありましたが、無事初飛行を終えることができました。 また、プロポと受信機との通信が途切れがち、フィルムが剥がれがち、などなど修正箇所はありますが、揚抗比確認、充放電システム確認などを実施し、24時間チャレンジに向けて取り組んでいきます。 今年初めまで試作機の飛行試験を実施し、L/Dデータ取得方法や消費電力の計測方法を確立してきました。 それらで得たデータを基に、今回新たに24時間の飛行が成立する機体設計を行い、製作を進めてきました。その機体が5/9(日)のGW終盤、無事初飛行を迎えることに成功しました! ↓直線飛行、滑空 ↓無事飛べそうだったので、周回飛行 飛行データについてはPX4を使用し記録しています。周回飛行のデータは下記リンク先です。
log https://review.px4.io/plot_app?log=b9be4a6f-5655-4954-b5a2-b869d44285a1 3dview https://review.px4.io/3d?log=b9be4a6f-5655-4954-b5a2-b869d44285a1 胴体や主翼がまだすべて完成していないため空力性能が低い、尾翼を傾いて取り付けてしまった関係か機首が左へ向く傾向がある、等課題は様々ありますが、今後L/D測定、発電/消費電力計測に向けて準備を進めてまいります。 前回の更新から1か月以上経ってしまいましたが、構造設計・部品調達など飛行試験に向けた動きを加速しています。 まずは、今回の構造設計のポイントを2点紹介します。翼構造に関しては、主翼は中央翼、外翼は一本桁構造で考えてます。主翼再現性向上のため、ストリンガーを追加しました。 最外翼、水平、垂直尾翼は軽量化のため、Dボックス構造を採用予定です。前回の設計に比べて、6割以上削減できました。 前回のブログでも紹介した主翼制作も進んでいます。 Li-ionバッテリー、Battery Management System、モータも調達し、ソーラーセルのラミネートし、Power Line系が完成間近。5月8日の飛行試験に向けて、連日活動しています! 飛行機研究所では、ものづくりに興味のある方、ソーラー機に興味のある方を絶賛募集中です!宇都宮市内での活動が主になりますが、24時間飛行達成のため、お気軽にCONTACTページからお問い合わせください。
また、知見のある方々からのアドバイス等も大歓迎です!是非コメント等にてお寄せください。宜しくお願いします! ソーラー機の主翼を開発する際、パネル保護にどのようなフィルムを使うか、バッテリーのスペースを確保しながらストリンガーの配置をどうするか、ストリンガーとパネルを何で接着っさせるか等、検討すべき事項が多くあります。飛行機研究所では、構造・空力・システム等に明るいメンバーが集まり、試行錯誤しながら最適な形態を模索しています。 そして、昨日できあがった成果がこちら↓↓↓ 飛行機研究所では、ものづくりに興味のある方、ソーラー機に興味のある方を絶賛募集中です!宇都宮市内での活動が主になりますが、24時間飛行達成のため、お気軽にCONTACTページからお問い合わせください。
また、知見のある方々からのアドバイス等も大歓迎です!是非コメント等にてお寄せください。宜しくお願いします! 目的 18650bバッテリーの消費電力を算出するエクセルを作成する。 使用データ 18650bデータシート https://www.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/pdf/597043/PANASONICBATTERY/NCR18650B.html グラフ読み取りフリーツール www.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/pdf/597043/PANASONICBATTERY/NCR18650B.html DigitalCurveTraver https://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se174822.html 成果 1Cおよび2C放電時の消費電力を算出するエクセルを作成した。今後必要に応じて機能を拡張する。 https://drive.google.com/file/d/17Lj9_6JKEocsQt2Zs0EuqPnWeTQ9UdoW/view?usp=sharing 作成手順
①18650bデータシートの放電特性図から、1C・2CのプロットをDigitalCurveTracerを使って読み取る。 ②内挿関数を使って、計測した電圧値から容量を出力する。 ③放電開始時と放電終了時の容量の差から、放電容量を算出する。 |